明鏡止水/荘子に学ぶ、静寂と平静のシンボル

荘子
静寂な水面と自然の調和が、落ち着きと明晰さがあります。

  出典:荘子

明鏡止水とは

「明鏡止水」という故事の時代背景には、古代中国の哲学的な考え方が深く関係しています。

特に、道家思想を代表する『荘子』には、自然の摂理に従って生きることや、心の平穏を保つことの大切さを説いています。

当時、中国社会では戦乱が続き、社会不安や競争が激化していたため、多くの人々が心の平穏を求め、精神的な成長に注目していました。「明鏡止水」は、心を静かに保ち、物事に振り回されない生き方を体現することなったのです

「明鏡止水」の意味

流れる水は水面に映すことはできません。

しかし、流れが止まっている水は、鏡のように水面に映し出すことができる。

「明鏡止水」とは、何事にも冷静かつ誠実に向き合える心の状態を表しています。

 この言葉は、下記の言葉に由来します。

“人莫鉴于流水,而鉴于止水”(荘子)

「流れる水のようなものはないが、止まる水のようなものはない」

心が平静に澄んでいるならば、鏡のように水面から映し出します。

聖人の心は湖の鏡のように冷静で無欲でありながら、明晰な頭脳を有します。この故事成語は、心を研ぎ澄ませ、周囲の出来事や感情的な波に左右されないよう努めることを意味しています。

故事が生まれた背景

「明鏡止水」の故事は、『荘子』の外篇に記述され、荘子が善子(ぜんし)との山林での対話を通じて展開された語りから始まります。善子は「人間は注意を消耗しすぎるが、静かな心がない限り真実を見透すことはできない」と述べました。この教えは、「視野を明確にして、心を静寂に保ち続ける」という荘子思想の根本に対する考えを象徴しています。

現代ビジネスにおける明鏡止水:心の平静を保つ力

【登場人物】

  • 田中部長: 冷静沈着で、感情に流されないリーダー。
  • 山本課長: 熱血型で、感情が表に出やすいタイプ。
  • 佐藤さん: 観察力が高く、慎重に行動する新人社員。

【エピソード】

舞台は営業部のオフィス。大きな契約の交渉中にトラブルが発生し、チームが対応を話し合っている。

山本課長:
「部長、大変です!クライアントから急に無理な要求が来ました!納期を2週間前倒ししろなんて、絶対無理です!」

佐藤さん:
「課長、まずは落ち着きましょう……感情的になると、交渉がさらに難しくなりますよ。」

山本課長:
「いや、そんな簡単に言うけど、これは理不尽だろ!どうしてこんな要求を飲まなきゃいけないんだ!」

田中部長:
「山本、こんなときこそ『明鏡止水』の心を持つべきだ。」

山本課長:
「また出ました、部長の故事成語(笑)。今回はどんな話なんですか?」

【故事の解説】

田中部長:
「『明鏡止水』とは、荘子の言葉で、『澄み切った鏡と静まり返った水』を指す。外部の刺激や感情に動じず、冷静に物事を見極める心の状態を表している。」

佐藤さん:
「なるほど……心がざわついていると、鏡に映るものも歪んで見えたり、水面に映る景色が揺らいだりする、ということですね。」

田中部長:
「その通りだ。逆に、心が澄んでいれば、どんな状況でも正確に物事を見極めることができる。」

山本課長:
「いやいや、そんな『静かな心』を持つ余裕なんてありませんよ!今この瞬間にも納期が迫ってるんです!」

【冷静な対応の重要性】

田中部長:
「山本、焦りや怒りに支配されてしまうと、判断が鈍る。『明鏡止水』の心を持てば、状況を冷静に分析し、正しい判断ができるんだ。」

佐藤さん:
「たとえば、まずはクライアントがどうして納期を早めたいのかを聞いてみるのはどうでしょう?何か特別な理由があるかもしれません。」

山本課長:
「確かに……クライアントの事情を聞かないと、ただの無理難題にしか見えないな。」

【行動計画を立てる】

佐藤さん:
「部長、冷静になるためのコツってありますか?私は時々焦ってしまうことがあるので……。」

田中部長:
「大事なのは、まず一歩引いて状況を見ることだ。そして、『何が一番重要か』を明確にする。感情が湧いてきたら、深呼吸をして心を静めることも効果的だ。」

山本課長:
「深呼吸か……でも、それだけで冷静になれるかな。」

佐藤さん:
「課長、試してみましょうよ!ほら、せーの……(深呼吸する)」

山本課長:
「……あれ、少し冷静になった気がする(笑)。」

田中部長:
「その調子だ。『明鏡止水』の心を持てば、今後どんなトラブルがあっても、正しい道を見つけられる。」

【結果】

数日後

山本課長:
「部長、佐藤さん、今回の交渉、無事に解決しました!クライアントの納期前倒しの理由が分かったので、少しだけ調整して合意できました。」

佐藤さん:
「良かったですね!課長が冷静に対応したおかげです。」

田中部長:
「山本、『明鏡止水』の心を持つ大切さが分かっただろう。」

山本課長:
「はい……深呼吸と冷静さ、侮れませんね。」

佐藤さん:
「私もこれから、心がざわついたら『鏡と水』をイメージして冷静さを保ちます!」

【教訓】

「明鏡止水」の教えは、感情に流されず、冷静に状況を分析する心の平静を持つことの重要性を伝えています。ビジネスや日常においても、冷静な心を保つことで、最善の判断を下し、トラブルや困難を乗り越える力を養うことができます。

プロフィール
編集者
Takeshi

医療専門紙の取材・編集職を15年以上の経験があり、担当編集としての書籍は、8冊(うち2冊は中国・台湾版)があります。

本サイトでは、日々の生活やビジネスで役立ち、古くから伝わる故事成語の深い意味や背景をわかりやすく解説し、皆さまの心に響くメッセージをお届けしたいと思っています。歴史や文学への情熱を持ちながら、長年のメディア経験を通じて得た視点を活かし、多くの方に「古き知恵の力」を実感していただけるようにしたいと思います。

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