出典/墨子
不偏不党とは
「不偏不党(ふへんふとう)」とは、「偏らず、党派心を持たない」という意味で、物事を公平かつ中立に判断することを指します。ここでの「偏」は偏見を持つこと、「党」は一方的な味方をすることを指します。「不偏不党」とは、個人的な利益や感情によって判断を歪めることを戒め、常に正義と公正さを重んじました。
墨子は、個人的な利益や感情によって判断を歪めることを戒め、常に正義と公正さを重んじました。
この言葉は、中国戦国時代の思想家・墨子(ぼくし)の教えに由来し、現代でも公正な意思決定や公平な判断を示す際に用いられる重要な概念です。
出典と歴史的背景
「不偏不党」の教えは、墨子が記した『墨子』に含まれます。「墨子」には53篇が現存されていますが、いくつかは紛失しているようです。墨子は、実用主義で庶民に伝わりやすい主張が特徴です。墨子は儒学を学ぶも、孔子を中心とする儒家と対立しながら、多くの弟子を育て、戦国時代の思想界に大きな影響を与えました。
墨子の背景
墨子は紀元前5世紀ごろ、戦国時代の中国で活躍した思想家です。墨子は「家族愛」を重視する教えに反発し、全ての人を平等に愛する「兼愛(けんあい)」を説きました。また、戦争を否定し、平和と実用的な知識の重要性を説く「非攻(ひこう)」も提唱しました。
故事のエピソード
『墨子』には、ある領主に対して「特定の勢力に加担せず、公正に物事を判断すべき」と忠告したエピソードが記されています。
ある時、隣国との外交交渉において、その領主が自国の利益だけを求めて一方的な交渉をしようとしていました。墨子はこれに対して次のように諭しました。
「特定の利益に固執すれば他者からの信頼を失い、長期的には自らを損なうことになる。公正であれば他者も信頼し、協力が生まれる」
この言葉に心を動かされた領主は、交渉方針を改め、公正な条件を提示することで双方の国益を守ることに成功したといいます。
現代ビジネス・社会への応用
「不偏不党」の教えは、現代のビジネスや社会においても多くの場面で応用可能です。
- リーダーシップと意思決定現代のビジネスリーダーは、特定の部門や個人に肩入れすることなく、全体の利益を考慮した意思決定を行うことが求められます。
具体例:
ある企業のCEOが、新しいプロジェクトの選定において、親しい同僚の提案を優遇するのではなく、全てのアイデアを公平に評価しました。その結果、最も利益をもたらすプロジェクトが選ばれ、企業の成長につながりました。 - 法曹界における公正な判断裁判官や弁護士が特定の勢力や利害関係に左右されず、公正な判断を下すことは、社会の信頼を保つために重要です。
具体例:
ある裁判官が社会的に影響力のある人物の訴訟案件を担当した際、外部からの圧力に屈することなく、法に基づいて厳正な判決を下しました。この結果、司法制度への信頼が強化されました。 - 組織内での公平な人事評価組織の中で人事評価を行う際に、上司が個人的な感情や好みに基づいて評価することは組織の士気低下につながります。公平な基準に基づいた評価は、社員のモチベーションを向上させます。
具体例:
ある企業が導入した360度評価制度では、同僚や部下からのフィードバックを含めた公正な評価が行われ、優秀な人材の育成と定着に成功しました。

田中部長と「不偏不党」~営業部、公正さの末に大混乱!?~
新しいプロジェクトに向けた重要な意思決定をするために営業部が集まった。しかし、「誰の意見にも偏らずに決める」という部長の意気込みが、想像以上にカオスな結果を生み出すことに――。
【登場人物】
- 田中部長(50歳):公正を意識しすぎて逆に迷走するリーダー。
- 山本課長(40歳):現実主義で、いつも部長の暴走にツッコミを入れる皮肉屋。
- 佐藤さん(25歳):無邪気な発言で会議をさらに混乱させる天然ムードメーカー。
田中部長:「みんな、今日は新しいプロジェクトの方針を決める重要な会議だ!」
佐藤さん:「どんなプロジェクトなんですか?」
田中部長:「ズバリ、『営業部の未来を担う戦略を策定する』という大事なものだ!」
山本課長:「それ大げさすぎませんか?普通に“次のキャンペーン案を決める”だけでしょ。」
田中部長:「だが、今回は特別だ!誰か一人の意見に偏ることなく、全員の意見を公平に反映する。不偏不党の精神でいくぞ!」
佐藤さん:「不偏不党って、何ですか?」
田中部長:「良い質問だ!これは中国の思想家・墨子が説いたもので、特定の人や勢力に偏らずに公正な判断をすることを意味する。」
山本課長:「つまり、“えこひいき禁止”ってことですね。」
田中部長:「その通りだ!今回は誰の意見にも偏らずに、完璧な意思決定を目指す!」
佐藤さん:「公平ってことは、みんなの意見を全部採用するんですか?」
田中部長:「そうだ!だから、どんな意見も排除しない!」
山本課長:「それ、逆に大混乱になる予感しかしませんけど。」
【ブレインストーミング開始:意見が飛び交う】
田中部長:「では、最初にアイデアを出してもらおう!」
佐藤さん:「じゃあ、私は“全員でクライアントを巻き込むイベント”がいいと思います!」
山本課長:「いや、それだと予算オーバーになりませんか?」
田中部長:「待て!どちらの意見も公平に扱う。つまり、イベントはやるが、予算は削減する!」
山本課長:「それって無理がありますよね?」
佐藤さん:「じゃあ、イベント中はみんなで手作りのノベルティを配ります!」
山本課長:「いやいや、手作りノベルティなんて、クライアントに粗品レベルだと思われますよ。」
田中部長:「待て!手作り感も評価されるかもしれない!佐藤くんの案は採用だ!」
山本課長:「いや、それと同時に“まともなプロモーション”も必要ですよ。」
田中部長:「よし、両方やるぞ!公平に!」
佐藤さん:「部長、どんどん混ざってきてません?」
【意思決定の末に大混乱】
田中部長:「さあ、次の意見は?」
佐藤さん:「営業部全員で歌を歌って、クライアントに感謝の気持ちを伝えるのはどうですか?」
山本課長:「いや、絶対やめましょう。それ、逆に引かれますから。」
田中部長:「いや待て!佐藤くんの感謝を示す案も良い。山本の冷静な指摘も一理ある。つまり、“感謝の歌は歌うが、録音してBGMとして流す”にしよう!」
山本課長:「部長、それ全然公正じゃなくて、ただ混ぜただけですよね。」
佐藤さん:「でも、どんな案も取り入れられていて楽しいです!」
田中部長:「よし、次の案にいこう!」
(どんどん意見が混ざり合い、最終的に“イベント、手作りノベルティ、歌、そして予算削減”が同時進行するというカオスな結果に…)
【会議終了後の反省】
山本課長:「部長、これ本当にうまくいくんですか?」
田中部長:「大丈夫だ!どの意見も採用したから、みんなが満足する!」
山本課長:「いや、満足どころか誰も何をすればいいか分かってないと思いますけど。」
佐藤さん:「でも部長、公平に決めるってこういうことなんですよね?」
田中部長:「その通りだ!これこそ“不偏不党”だ!」
山本課長:「いや、これただの“なんでもアリ”ですよね。」
こうして営業部の「不偏不党」に基づくプロジェクトは、全員の意見が混ざり合った結果、謎のイベントへと変貌を遂げた。しかし、結果的にクライアントには「自由でユニークな営業部」として好印象を与え、奇跡的に成功を収める