破天荒/挑戦したことがない領域を切り開く

ビジネス

出典:『北夢瑣言』

※「晋書」を初出とする説もあり。

破天荒(はてんこう)とは

「破天荒」は、現代の日本語では「前例がなく、初めて成し遂げられること」を指す故事成語です。日常会話やビジネスシーンでも「破天荒な発想」「破天荒な挑戦」という形で使われ、革新や挑戦を評価する言葉として広く親しまれています。

しかし、その起源をたどると、現代の用法とは少し異なるニュアンスを含んでいます。  

「破天荒」の由来

「破天荒」は、五代十国時代(907年〜960年)に編纂された中国の説話集『北夢瑣言』に記載されています。次のような逸話に基づいています。  

唐の時代、荊州の地方官吏選抜試験である「進士試験」には、長らく合格者が出ない状況が続いていました。この荊州の地域が「天荒」と呼ばれるほど、合格という「花」が咲かない土地とされていました。しかし、ある年に張済(ちょうさい)という人物がついに合格者を出したことで、この地域の「天荒」が「破れた」と評されるようになりました。

ここから、「破天荒」は「初めての偉業を成し遂げること」という意味を持つようになったのです。  

なお、この逸話の中心人物である張済は、荊州出身の学者でした。彼が進士試験に合格したことで、荊州の「無合格者」という悪評を払拭し、地域の誇りを取り戻しました。張済の功績は、個人の努力だけでなく、地域全体の希望や期待を背負ったものだったと言えます。  

初出資料が複数ある理由

(1)「晋書」初出説

  • 概要
    晋の時代、ある地方では官吏登用試験(科挙)に合格者が一人も出なかったが、初めて合格者が出たときに「これで“天荒”が破られた」と称賛した、という逸話が『晋書』にあるという説。

評価
辞書や成語辞典などでは、しばしばこの説が紹介されていますが、実際に『晋書』の本文から直接確認できない、または記述が曖昧という指摘があります。

(2)北夢瑣言』初出説

  • 作者と時代背景
    『北夢瑣言』は五代十国時代(10世紀頃)に活躍した孙光宪(そん こうけん)の随筆・雑録集です。社会、文化、人物逸話などが記されており、唐末から五代にかけての世相が描かれています。
  • 破天荒が出てくる文脈
    『北夢瑣言』の中で「科挙試験に初めて合格者が出た地方」に関して、「破天荒」という表現が使われています。これを「破天荒」の最初期の文字資料として捉える説があります。

  評価
  実際に文献上で「破天荒」という語が確認できるのは『北夢瑣言』が比較的はっきりしているため、こちらを初出とみなす研究もあります。ただし、「晋の時代にさかのぼる故事」として記述されている部分もあり、孫光憲が晋代の逸話を引用または踏襲した可能性もあります。

(3)複数の由来がある理由

現代でも一般的に汎用されている故事ですが、その出典は複数説あります。その理由は、古代の文献は、改定や書き写しの過程で、内容の混同や逸失が起こりやすいことが、挙げられます。また、「天荒を破る」という表現自体が古くからあった可能性があり、後世の文献(『北夢瑣言』など)で成語として確立したと見る向きもあります。

「田中部長と破天荒」~営業部、前代未聞の挑戦!?~

ある日、田中部長が突然「大発表がある!」と営業部メンバーを集めた。その表情はいつにも増して自信に満ち溢れているのであった。

【登場人物】

  • 田中部長:伝説を残したがり、結果として大騒動を巻き起こすトラブルメーカー。
  • 山本課長:冷静に見えて心の中では部長の暴走を毎回楽しんでいる隠れファン。
  • 佐藤さん:素直で真面目だが、無意識に部長を追い詰める天才。

田中部長:「みんな!今日はとんでもないアイデアを持ってきたぞ!」

佐藤さん:「とんでもない…ですか?」

山本課長:「また部長の“とんでもない”シリーズですね。今回の企画はどんな破滅的なオチが待ってるんです?」

田中部長:「山本!破滅ではない!むしろ、これが成功すれば営業部の名は永遠に残る!題して――」

(ドラマチックに発表する田中部長)

田中部長:「前代未聞!営業部の“空飛ぶ商談”プロジェクト!」

佐藤さん:「空飛ぶ商談…?それって…どういうことですか?」

田中部長:「聞いて驚け!営業部は、地上の商談を超えて“空”で商談を行うんだ!そう、熱気球で商談をするんだよ!」

山本課長:「……(無言)」

佐藤さん:「……(ぽかん)」

田中部長:「ほら、驚きすぎて声も出ないだろう!?これこそが“破天荒”だ!前代未聞だ!」

【困惑する営業部】

山本課長:「部長、それ…本気ですか?熱気球で商談って、何のメリットがあるんです?」

田中部長:「山本、君にはロマンが足りない!地上の会議室なんてありふれている。だが、空の上ならどうだ?クライアントも感動して、その場で契約書にサインするに決まっている!」

佐藤さん:「でも…風が強い日だと、契約書が飛んでいっちゃいません?」

田中部長:「そこはしっかりクリップで留めるんだ!」

山本課長:「いやいやいや!そもそも熱気球にクライアントを乗せる許可とかどうするんです?費用は?安全対策は?」

田中部長:「ふん!細かいことを気にするな!“破天荒”という言葉はもともと、中国の故事から来ているんだぞ!」

佐藤さん:「それ、どういう意味なんですか?」

田中部長:「もともと“天荒”というのは、誰も耕したことのない荒れた土地のことを言う。それを“破る”というのは、誰もやったことのない新しい道を切り開く、という意味だ!」

山本課長:「つまり、今の部長の案も“誰もやらないだろうな”って意味では合ってますね。」

田中部長:「そうだろう!?…って、山本、それは皮肉か!?」

佐藤さん:「でも部長、熱気球ってちょっとワクワクします!私、乗ってみたいです!」

山本課長:「佐藤さん、乗ったところで酔いながら商談する羽目になりますよ。」

田中部長:「そんなことはない!むしろ、空の上でクライアントと一緒に景色を眺めれば、信頼関係が深まる!名付けて“スカイ・ビジネス・リレーション”だ!」

【クライマックス:突然の緊急事態】

(数日後、実験として熱気球を借りた田中部長。営業部全員でテスト飛行に挑むも…)

佐藤さん:「わあ、本当に空の上って気持ちいいですね!」

山本課長:「いや、部長。これって本当に大丈夫なんですか?なんかバスケットがガタガタしてますけど…」

田中部長:「安心しろ!プロに操縦を任せているからな!ほら、これが“破天荒”の景色だ!」

(突然、強風が吹き荒れる)

佐藤さん:「きゃああ!契約書が飛んでいっちゃいました!」

山本課長:「ほら言った通りだ!もうダメだ、こんなの前代未聞すぎます!」

田中部長:「ぐぬぬ、だが…だが…これも営業部の伝説だ!“破天荒”の意味をクライアントに体験させるのだ!」

こうして営業部の「空飛ぶ商談プロジェクト」は、強風により初回テストで終了することになった。しかし、この出来事は社内で語り継がれることとなり、田中部長は意図せず“破天荒”の伝説を残すことに成功した――。

プロフィール
編集者
Takeshi

医療専門紙の取材・編集職を15年以上の経験があり、担当編集としての書籍は、8冊(うち2冊は中国・台湾版)があります。

本サイトでは、日々の生活やビジネスで役立ち、古くから伝わる故事成語の深い意味や背景をわかりやすく解説し、皆さまの心に響くメッセージをお届けしたいと思っています。歴史や文学への情熱を持ちながら、長年のメディア経験を通じて得た視点を活かし、多くの方に「古き知恵の力」を実感していただけるようにしたいと思います。

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