大器晩成/長期的な視野で成功をつかみ取る

偉大な人物は長い時間を要する 成功

  出典:『老子』

「大器晩成」という故事は、「偉大な人物や成果は時間をかけてゆっくりと成し遂げられる」という意味を持つ故事成語です。この言葉は、現代のビジネスシーンにおいても、焦らず着実に取り組むことの重要性を説いています。本稿では、この言葉の出典、歴史的背景、具体的なエピソード、用例、そして現代ビジネスへの応用例を解説します

出典について

「大器晩成」の出典は、中国の古典『老子』です。老子は「道徳経」とも呼ばれる書物で、人生や自然の原理について哲学的に説いた内容が特徴です。

この言葉は、『老子』第41章に記されています:

   大器晩成、大音希聲、大象無形、道隠無名。夫唯道善貸且成

「大きな器量を備えた人物は晩成であって、巨大な音は耳にかそけく、巨大な象は、その姿形が目に入らない」

この一節では、完成した大きな器は時間をかけて作られるように、偉大な人物や成果もまた長い時間を要することを強調しています。

時代の背景

「大器晩成」が生まれた中国の春秋戦国時代(紀元前770年–紀元前221年)は、混乱と変革の時代でした。この時代には、即効性のある成果を求められることが多かった一方で、老子の哲学は自然の理(ことわり)に従うことの重要性を説き、急がず焦らずに取り組む自然体の価値を示しました。

故事のエピソード

「大器晩成」の具体的なエピソードは、偉大な人物や器の完成には時間がかかるという哲学的な比喩として語られます。例えば、立派な陶器は慎重につくられ、時間をかけて焼き上げられることで、その価値が高まります。

実例:歴史に見る「大器晩成」

  1. 永遠の歴史書:司馬遷(しばせん) 漢代の歴史家である司馬遷は、『史記』を完成させるために人生の大半を費やしました。その結果、この作品は後世の歴史書の模範とされています。
  2. 晩成の人物:漢の高祖 劉邦(りゅうほう) 若い頃は無名でありながら、中年期以降に力を発揮し、最終的に漢王朝を築いた人物です。

現代ビジネスへの応用例

「大器晩成」の教訓は、「即効性」「最速」「PDCA」や「短期的」な成果が重視されがちな現代のビジネスにおいて、戒めるためにも非常に有用です。

1. キャリア形成

大器晩成は、キャリアの早い段階で成功を収められなくても焦る必要がないことを教えてくれます。知識を吸収して基盤を固め、経験、人脈などの要素がその土台にのりますので、壮年期以降に成長の差が現れる例として認識されることがあります。

2. 長期プロジェクトの推進

長期的なプロジェクトにおいて、忍耐と計画性を持って取り組むことの重要性を示します。たとえば、新規事業の立ち上げには時間がかかるが、地道な努力と投資が最終的な成功につながることがあります。

3. 人材育成

若手社員が成果を出すまでに時間がかかることを受け入れ、長期的な視点で成長を支援する姿勢が求められます。 ある企業では、10年以上かけて社員のスキルを育て、リーダーとして活躍できる環境を整えています。


田中部長と大器晩成~営業部、遅れてきた才能を信じる!?

今月の営業成績が芳しくなく、メンバーの士気はダウン気味。そんな中、田中部長が「伝説のことわざ」で営業部を奮い立たせようと大演説を開始する。


【登場人物】

  • 田中部長(50歳):プライド高めで「俺は遅咲きタイプ」と言い張る楽天家。
  • 山本課長(40歳):現実主義で冷静だが、部長の話にいつも鋭いツッコミを入れる皮肉屋。
  • 佐藤さん(25歳):純粋無垢で天然。場を明るくするムードメーカー。

【会話】

田中部長:「みんな!大器晩成という言葉を知っているか?」

佐藤さん:「えっと、聞いたことはありますけど、詳しくは知らないです。」

山本課長:「大器晩成…つまり、完成まで時間がかかるけど、大物になる器って意味ですよね。部長、それがどうしました?」

田中部長:「それだ!我が営業部はまさに大器晩成型なんだ!」

佐藤さん:「ええっ!?私たちが“大器”なんですか?」

山本課長:「いや、むしろ“完成”しないまま今月の目標が終わりそうですけど。」

田中部長:「バカモノ!大器晩成とは、遅れて咲くから価値があるんだ!我々もまだ本気を出していないだけだ!」

佐藤さん:「そうなんですね!部長、じゃあ私も“晩成”型かも!」

山本課長:「いや、佐藤さん、部長の“大器晩成”論にあまり乗らない方がいいですよ。」

田中部長:「むっ、山本!君はどうしてそうネガティブなんだ!もっと夢を持て!」

山本課長:「いえ、現実を見てるだけです。で、その“大器晩成”を営業にどう活かすつもりなんです?」

田中部長:「よし、説明しよう。まず、大器晩成には3つのポイントがある!」


【田中部長、大器晩成の3か条を語る】

田中部長:「まず1つ目!“焦らない”だ!」

佐藤さん:「焦らない…ですか?」

田中部長:「そうだ!営業で結果が出ない時も、『俺は大器だ』と思って落ち着くんだ!」

山本課長:「いや、それで結果が出るなら苦労しませんよ。」

田中部長:「次に2つ目!“育てる”だ!」

佐藤さん:「何を育てるんですか?」

田中部長:「クライアントとの関係だ!小さな芽を育てるように、じっくりと信頼を積み重ねるんだ!」

山本課長:「いや、それ普通の営業の基本ですよね。」

田中部長:「そして最後に3つ目!“信じる”だ!」

佐藤さん:「何を信じるんですか?」

田中部長:「自分自身の器だ!『俺は大器だ!いつか咲く!』と信じることで、周りにも自信が伝わる!」

山本課長:「いやいや、そんなこと言ったらクライアントに『いつ咲くんだ』って突っ込まれますよ。」


【ドタバタ:部長、大器を証明しようとする】

田中部長:「よし、理屈じゃなく行動で見せてやる!佐藤くん、君の案件を一緒に手伝おう!」

佐藤さん:「えっ、本当ですか?じゃあ、このクライアントの商談をお願いできますか?」

田中部長:「任せろ!私の“晩成力”で必ず成功させる!」

(商談中)

クライアント:「田中部長さん、御社の提案内容は面白いですが、具体的な実行プランが見えませんね。」

田中部長:「ご安心ください。我々は“大器晩成型”のチームです!結果は後から必ず出ます!」

クライアント:「えっと…後からって、いつ頃ですか?」

田中部長:「それはですね…まあ…えーと…じっくりと長い目で見ていただければ!」

(結果:商談失敗)


【営業部に戻って反省会】

山本課長:「だから言ったじゃないですか。“大器晩成”を言い訳にしてもクライアントは納得しませんよ。」

田中部長:「むむむ…確かにちょっと急ぎすぎたかもしれん。だが、次こそは必ず成功させる!」

佐藤さん:「そうですね!私も“大器晩成”を信じて頑張ります!」

山本課長:「いや、佐藤さんは普通に努力してくださいね。」

田中部長:「そうだ!みんなで晩成型の営業部を目指すんだ!山本も信じてくれ!」

山本課長:「わかりましたよ…。まあ、晩成するまであと10年くらいかかりそうですけどね。」

田中部長:「それでもいい!私は諦めないぞ!」

こうして、営業部は田中部長の“大器晩成”戦略を信じることに(半ば強制的に)決定した。彼らが本当に“大器”になる日が来るのか。その未来は誰にもわからない。ただし、今日も営業部は元気だった。

まとめ

「大器晩成」という故事は、焦らず着実に努力を続けることの重要性を教えてくれます。この教訓は、現代のビジネスやキャリア形成、長期プロジェクトにおいても有益です。

老子の哲学に学び、短期的な成功に惑わされず、長期的な視野を持って取り組む姿勢を大切にしましょう。

類義語

  • 愚公移山:粘り強く努力することで大きな目標を達成する。
  • 温故知新:過去の知恵を活かして新しいことを学ぶ。
  • 急がば回れ:急ぎすぎるよりも慎重に取り組む方が成功に近づく。
  • 石の上にも三年:忍耐強く努力を続ければ成果が出る。
  • 継続は力なり:地道に続けることが成功につながる。

プロフィール
編集者
Takeshi

医療専門紙の取材・編集職を15年以上の経験があり、担当編集としての書籍は、8冊(うち2冊は中国・台湾版)があります。

本サイトでは、日々の生活やビジネスで役立ち、古くから伝わる故事成語の深い意味や背景をわかりやすく解説し、皆さまの心に響くメッセージをお届けしたいと思っています。歴史や文学への情熱を持ちながら、長年のメディア経験を通じて得た視点を活かし、多くの方に「古き知恵の力」を実感していただけるようにしたいと思います。

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