出典:『史記』李斯列伝
「河海は細流を択ばず」とは
大きな川や海がどんなに小さな水流でも分け隔てなく受け入れる姿を表した言葉です。広大な河や海は無数の細い小川や支流の水を集めることでさらに豊かになり、その恩恵をより広い範囲にもたらします。これと同様に、人の心や知識においても、わずかな意見・情報・経験であっても排除することなく受けとめることが、やがて大きな成長につながるという教えを示しています。
「河海は細流を択ばず」の出典について
「河海は細流を択ばず」は、戦国時代の秦の宰相・李斯(りし)が、秦王(後の始皇帝)に諫言した文章として知られる「諫逐客書(かんちくかくしょ)」に由来するものがよく知られた出典です。
李斯は、諸国から集まった人材を追放しようとする秦王の方針に反対し、
「泰山は土壌を辞(じ)せず、故(ゆえ)に能(よ)くその大を成す。
河海は細流(せいりゅう/さいりゅう)を択ばず、故に能くその深を成す。」
と述べて、
「小さなものを排除せず受け入れる度量の大きさが、
最終的に大きな成果や深い領域をもたらすのだ」
という考え方を説きました。
この「諫逐客書」は、司馬遷の『史記』「李斯列伝」に収録されています。文章中では「河海不擇涓滴(けんてき)」など異なる表記も見られますが、いずれも「どんなに小さな水流(細流)でもこばまず取り込む河や海の広大さ」をたとえとして、人材や意見を広く受け入れる重要性を説いたものです。
したがって、現代で広く知られている「河海は細流を択ばず(厭わず)」という故事表現の出典としては、
- 李斯が著したとされる「諫逐客書」
- それが収められている『史記』「李斯列伝」
が代表的な典拠となります。
「河海は細流を択ばず」の本質的な重要点
「河海は細流を択ばず」が伝える教訓は、現代で言うところの「多様性(ダイバーシティ)」の大切さとも深く結びついています。
- 多様な意見を受け入れる: 自分と異なる視点や価値観を排除せずに耳を傾けることで、新たな学びやイノベーションが生まれる。
- 柔軟な姿勢: 結論を急がず、あらゆる可能性や背景を考慮することで、より豊かな成果につながる。
「河海は細流を択ばず」という言葉は、周囲から寄せられる声や情報を取りこぼさずに取り入れる度量の広さを説いており、これは組織運営やリーダーシップの場面でもしばしば引用されます。
現代社会における意義
SNSや新メディアの発達により、多種多様な情報が日々押し寄せてくる現代だからこそ、「河海は細流を択ばず」の精神が改めて注目されます。情報が溢れる時代にあっては、むしろ自分に不都合な意見や小さな話題を無視したい衝動に駆られることもあるかもしれません。しかし、そうした排他的な態度ではなく、できる限りオープンな姿勢を保ちつつ情報を収集し、取捨選択していくことが、新たな価値を生み出す鍵となるでしょう。
まとめ
「河海は細流を択ばず/厭わず」という故事は、一見すると当たり前のように思える「何でも受け入れる」態度が、いかに難しく、そしていかに大きな成果をもたらすかを教えてくれます。
人間関係やビジネス、自己研鑽など、あらゆる場面でこの言葉が示唆しているのは、“器の大きさ”と“柔軟な心”の必要性です。大河や海のように、より多くの流れを迎え入れる度量を育んでいきたいものです。

田中部長と「河海は細流を択ばず」~営業部、どんな案件でも受け入れます!?~
ある日、営業部に 「売上目標達成まであと少し!」 というお達しが下る。しかし、田中部長が 「どんな案件でも受け入れろ!」 という “河海は細流を択ばず” 理論を持ち出し、営業部は 大混乱のカオス状態 へ突入することに――!?
【登場人物】
- 田中部長(50歳):小さな案件でも「売上は積み重ね」と豪語する熱血リーダー。だが、方向性がズレがち。
- 山本課長(40歳):冷静なツッコミ担当。部長の「何でも受け入れろ理論」に振り回される。
- 佐藤さん(25歳):天然で無邪気。何でも受け入れる方針を 超真面目に 実行し、大混乱を引き起こす。
【会話】
田中部長:「みんな、大変だ!」
佐藤さん:「えっ!?また何かあったんですか?」
山本課長:「まあ、大抵ろくでもない話ですよね…。」
田中部長:「売上目標まであと 100万円 !! これを達成しないと、来期の予算が削減される!!」
佐藤さん:「ええええっ!? じゃあ、どうするんですか?」
田中部長:「そこで大事なのが、 “河海は細流を択ばず” の精神だ!!」
佐藤さん:「えっ!? 河海って、あの大きな川とか海のことですか?」
山本課長:「“大河や海は、小さな流れも拒まずに受け入れる”って意味ですよ。つまり、 “どんなに小さな仕事でも、積み重ねれば大きな成果になる” ってことです。」
田中部長:「その通り!! つまり、 どんな案件でも受け入れれば、目標達成は間違いなし!!」
佐藤さん:「わあ!! じゃあ、どんな依頼でも受けちゃいましょう!!」
山本課長(小声で):「いやいや、ちゃんと案件を選ばないと…絶対にヤバい案件が来る…。」
【田中部長の「河海は細流を択ばず」作戦】
【作戦①:「どんな案件でも受ける!」】
田中部長:「営業部のスローガンは “NOと言わない営業” だ!!」
佐藤さん:「すごい! じゃあ、どんな仕事でもやります!」
山本課長:「いやいや、絶対に怪しい仕事も来ますよね?」
(そこに1件の電話が入る📞)
佐藤さん:「はい、営業部です! …えっ? “会社のロゴ入りTシャツを100枚注文” ですか??」
田中部長:「おお! いいじゃないか! 100枚なら売上に貢献する!! 受けろ!!」
佐藤さん:「承知しました!!」
(数分後)
山本課長:「ちょっと待ってください。 …これ、Tシャツ1枚 300円 って書いてありますよ?」
田中部長:「おお… つまり 100枚で3万円 !!」
山本課長:「部長… 目標100万円なのに、これじゃ全然足りませんよ!?」
田中部長:「むむむ… だが、小さな仕事を積み重ねるのが重要だ!!」
山本課長(小声で):「このペースだと、あと 30回 受注しないと足りませんけど…?」
【作戦②:「副業レベルの仕事まで受ける!」】
(その後、営業部のメールボックスには 「小さな仕事」 が大量に…📩)
佐藤さん:「部長!! こんな依頼が来ました!! “名刺デザインを作ってほしい” って!」
田中部長:「おお! 名刺デザイン!? いくらだ?」
佐藤さん:「… 1枚500円 です!」
山本課長:「いや、それ 普通にデザイン会社の仕事 ですよね?」
田中部長:「だが、受ける!! これも売上の “細流” だ!!」
(さらに…)
佐藤さん:「あっ! “オリジナルはんこ制作” の依頼が!!」
山本課長:「はんこ屋じゃないんだから!!」
田中部長:「だが、受ける!!」
【作戦③:「最終手段:営業部全員がバイトする!!」】
佐藤さん:「部長!! もう受注できる案件がありません!!」
山本課長:「もう普通の営業とはかけ離れてますよね…。」
田中部長:「ならば 最終手段!! 営業部全員でバイトだ!!」
佐藤さん:「えっ!? バイトって何ですか!?」
田中部長:「例えば… デリバリーのバイトをすれば、1回の配達で500円! 200回やれば目標達成だ!!」
山本課長:「いやいや、営業部として どこに向かってるんですか!?」
【商談当日:衝撃の結末】
(営業部は100件以上の細かい仕事をこなし、目標まであと 5万円 というところまで来る)
佐藤さん:「部長!! あともう少しですよ!!」
(すると、そこに1件の電話📞)
クライアント:「あの…すみません。 100万円の案件 をお願いできますか?」
佐藤さん:「えっ!? 100万円!? 一発で目標達成です!!」
山本課長(小声で):「最初から **こういう大きい案件狙えばよかったのでは…?」」
田中部長:「見たか! 細流を集めていたら、最後に大河が流れ込んできたのだ!!」
山本課長:「いや、ただの偶然ですよね!?」
こうして営業部は、 「細かい仕事を積み重ねる作戦」 で、まさかの目標達成。しかし、この方法が次回も通用するかは 完全に未知数 であった――。