出典:烏江亭(うこうてい)
捲土重来とは
「捲土重来(けんどちょうらい)」は、中国晩唐の詩人で豪放な詩で著名な杜牧(とぼく)の詩から生まれた故事です。
「敗北した者が再び力を蓄え、勢いを取り戻して巻き返す」ことを意味します。
特に、挫折から立ち上がり、新たな挑戦に挑む精神を称える言葉として用いられます。
捲土重来の背景
詩人・杜牧(とぼく)は、政治や歴史に対する鋭い洞察を持っていました。彼の詩「烏江亭」では、秦末期の覇王・項羽が漢軍に敗れ、烏江で自害したエピソードを描いています。
この詩の中で、杜牧は項羽の最期を悲しむと同時に、彼が再起を試みなかったことへの批判と惜しみを込めています。
江東の子弟多才俊、捲土重来未だ知らず 烏江亭
(江東の若者には才能のある者が多い。再起のチャンスがあるかもしれない)
この詩が後世にわたって広まり、現代でも「再起」を象徴する言葉として親しまれています。
杜牧は、項羽が自害した最期を悲しむと同時に、彼が再起を試みなかったことへの批判と惜しみを込めています。
この詩は、項羽に関する書籍を愛読された層には、深く心の中に刻まれているのではないでしょうか。

現代ビジネスへの教訓
捲土重来がただの再挑戦ではなく、反省と戦略的な準備があってこそ成り立つことを示した事例を、下記に3例挙げました。現代ビジネスにおいても「失敗を恐れず再挑戦する精神」が重要であることを示しています。
1. Apple Inc.の復活劇
- 背景: 1980年代後半、スティーブ・ジョブズがAppleを追われた後、同社は市場競争力を失い、大きな危機に陥りました。
- 捲土重来: 1997年にジョブズが復帰。iMacの成功を皮切りに、iPod、iPhone、MacBookなど革新的な製品を次々に生み出し、Appleを世界的なトップ企業へと押し上げました。
- 教訓: ビジョンと革新があれば、どんな失敗も跳ね返せるという好例。
2. 任天堂のゲーム事業復活
- 背景: 2012年の「Wii U」の発売は市場の期待を裏切り、売上が伸び悩みました。一時は任天堂のゲーム事業の未来が危ぶまれるほどでした。
- 捲土重来: 2017年に「Nintendo Switch」を発売。家庭用ゲーム機と携帯ゲーム機の融合という新しいコンセプトで、またたく間に大ヒット商品となりました。
- 教訓: 市場の声を聞き、柔軟に戦略を転換することで再びチャンスをつかんだ。
3. Starbucksの再建
- 背景: 2000年代半ば、Starbucks(米シアトル)は急速な拡大路線が裏目に出て、店舗のクオリティやブランドイメージが低下し、売上が落ち込んでいました。
- 捲土重来: 創業者のハワード・シュルツがCEOに復帰。店舗運営を見直し、店舗体験の向上や新メニューの導入、デジタル戦略を推進し、ブランド価値を取り戻しました。
- 教訓: 原点に立ち返ることが、再建のカギになる。

田中部長と「捲土重来」~営業部、再起を図る!?~
とある重要商談で惨敗した営業部。打ちひしがれるメンバーの前で、田中部長が「捲土重来」を掲げて士気を高めようとする。しかし、例によって方向性はズレにズレていく…。
【登場人物】
- 田中部長(50歳):負けを認めない熱血リーダー。再起に向けて空回りしがち。
- 山本課長(40歳):冷静で現実的な皮肉屋。部長の迷走を見守る(時々止める)。
- 佐藤さん(25歳):天真爛漫な新人。天然発言で会議をさらに混乱させるムードメーカー。
田中部長:「みんな!聞け!」
佐藤さん:「えっ!?部長、また何か新しいノベルティ作るんですか?」
田中部長:「違う!今回の商談で惨敗した我々だが、ここで終わるわけにはいかない!」
山本課長:「まあ、負けたのは事実ですけど、次をどうするか考えないといけませんね。」
田中部長:「そうだ!我々は“捲土重来”を目指すんだ!」
佐藤さん:「捲土重来…?それってどういう意味ですか?」
山本課長:「“一度敗れた者が、再び力を蓄えて巻き返す”って意味ですよ。」
田中部長:「その通りだ!かつて唐の詩人、杜牧が書いた言葉だ。“失敗”を“勝利”に変える力、それが捲土重来だ!」
佐藤さん:「でも部長、どうやって巻き返すんですか?」
田中部長:「よし、捲土重来の3ステップを説明しよう!」
【捲土重来の3ステップ】
田中部長:「まず、第一ステップは“反省”だ!」
佐藤さん:「反省って、何をするんですか?」
田中部長:「いいか、なぜ失敗したかを徹底的に振り返るんだ!例えば、なぜクライアントが“興味を失った”のか?」
山本課長:「それは部長が、提案の途中で話を脱線させて、“営業部伝説の7不思議”を延々と語ったせいでは?」
田中部長:「ぐっ…それは…。まあ、少し脱線しすぎたかもしれない…。」
佐藤さん:「でも、その伝説、ちょっと面白かったですよね!」
山本課長:「佐藤さん、そこは褒めるところじゃないです。」
田中部長:「次だ!第二ステップは“準備”だ!」
佐藤さん:「準備…って、何を準備するんですか?」
田中部長:「これまで以上に完璧な提案書を作るんだ!クライアントのニーズを徹底的に分析し、どんな質問にも答えられるようにする!」
山本課長:「部長、それ普通に営業の基本ですよね。」
田中部長:「黙れ!最後だ!第三ステップは“気合”だ!」
佐藤さん:「気合…。ですか?」
田中部長:「そうだ!気合がなければ商談に勝てるわけがない!だから、次回の商談では全員が“勝つぞ!”という熱意を全力でアピールする!」
山本課長:「…つまり、また熱くなりすぎて失敗する未来が見えますね。」
【実践:捲土重来の挑戦】
(数日後、再びクライアント先で商談がスタートする)
田中部長:「本日は貴社のために、われわれ営業部が渾身の提案をお持ちしました!」
クライアント:「ありがとうございます。それで、どんな内容ですか?」
田中部長:「こちらをご覧ください!」(準備した提案書を広げる)
佐藤さん:「部長、でもこれ見出しのフォントが微妙にズレてます!」
田中部長:「ぐっ…そんなことは気にするな!気合でカバーだ!」
クライアント:「あの…内容自体は悪くないですが、少し提案が抽象的ですね。」
山本課長:「部長、ここは冷静に補足説明をしましょう。」
田中部長:「いや、ここは気合で――」
佐藤さん:「部長!もう“気合”はやめて!」
(なんとか冷静さを取り戻し、具体的な提案を進める…)
こうして、営業部は田中部長の「気合戦術」に振り回されつつも、無事に商談を成功に導いた。ただし、捲土重来を果たしたかどうかは、彼らが次にまた失敗するまでの間だけ確かなものだった。
まとめ
「捲土重来」は、過去の経験を活かし、未来に向けて果敢に挑む力を象徴する言葉として、現代社会での生き方や働き方に深く根ざしています。この精神を持つことで、私たちはどんな逆境からでも再び立ち上がり、成功への道を切り開くことができるのです。