泰然自若/いかなる波乱にも動じぬ心

教訓

出典:「金史」燕山道伝

「泰然自若」とは

「泰然自若」(たいぜんじじゃく)とは、どのような状況に置かれても、落ち着きを失わずに平静さを保ち続ける様を表す言葉です。

  • 泰然:安らかで動じない様子。
  • 自若:「普段と変わらない」という意味で、騒ぎ立てることなく平常心を維持しているさま。

泰然自若とは「まるで大きな山がそびえ立つように揺るぎない心境でいること」を強調した表現となります。現代においても、ピンチや想定外のトラブルに見舞われた際に、落ち着いて対処する姿を指してしばしば使われます。

最古の明確な出典『金史』燕山道伝

近年の研究や文献の精査により、「泰然自若」という四字熟語がはっきりと確認できる最古の用例は、元代に編纂された正史『金史』の「燕山道伝」に見られる、という説が有力となっています。

● 『金史』とは

  • 『金史』:13世紀に滅亡した女真(じょしん)族の王朝、金(1115–1234)の歴史を、元(モンゴル帝国)によって編纂した正史。編纂完了はおよそ14世紀半ば(1345年)とされる。
  • 中国二十四史の一つであり、公的な史書として信頼性・権威が高い。

● 燕山道伝とは

  • 燕山道:金代における地方行政区画の一つ。
  • そこに属した官吏や武将、あるいはその地域での出来事などが伝記形式でまとめられている。
  • その中のある人物の逸話で、明確に「泰然自若」と四文字を一続きに記している箇所が確認できる。

このため、「泰然自若」という四字がひとまとまりの“成語”として成立し、文献上にはっきり登場する例としては、『金史』が最古のものと見なされるようになりました。

これまで複数の「出典」とされてきた背景

「泰然自若」の初出・原典は?

古代中国の書物に関してはしばしば議論になりますが、その理由の一つは、下記のような事情があるためです。

  1. 語句の寄せ集め・後世の編纂
    「泰然」「自若」など、すでに存在する熟語や成句が、後世になって一つの四字熟語としてまとめられるケースが多い。
  2. 近い時代・似た語が散見される
    「泰然とし、自若なり」など、ほぼ同じ文脈・同じ箇所に出ている記述が古い史書にあり、それらをもって「ここが出典だ」とされてきた。
  3. 後世の辞書・字典の編纂での整理
    後の時代に作られた成語辞典などでは、古い書物の文言をつなぎ合わせて“初出”と見なしたり、ほかの四字熟語と混同されたりしてきた。

こうした経緯から、はっきり「この書が初出だ」と言いにくいものも多いのが実情です。ところが近年の研究では、『金史』に四文字が連続して使われている具体的用例があることが紹介され、「最古の文献上の確認例」として挙げられるようになっています。

現代への教訓

「泰然自若」は、現代社会においても「動じない」「冷静沈着」といった褒め言葉として頻繁に使用されています。特に、緊急事態や大きなプレッシャー下でのリーダー像を語るとき、あるいは大舞台で物怖じしない人の姿を称賛するときなど、まさに『金史』の時代から現代に至るまで、時代を超えて尊ばれる精神性を示す言葉といえます。

まとめ

  • 「泰然」、「自若」は古くから史書や人物評で多用されてきた表現。
  • ただし、四文字熟語として「泰然自若」がひとまとまりで登場する最古の確実な文献は、『金史』の「燕山道伝」に見られる。
  • 以後、長い年月を経て「どんな状況でも落ち着いて平静を保つ様子」を指す言葉として広く定着し、現代に至るまで使われ続けている。

もし「泰然自若」の出典に「金史」燕山道伝が挙げられているのを見かけたら、これは四文字熟語として完結した形で現れる最古の確実な用例を示すものだ、と理解していただければよいでしょう。

歴史上、どのように言葉が成立してきたかを知ることは、日本や東洋の文化がいかに古典を受け継ぎ・再編してきたかを知る手がかりにもなります。「動じない心」は、激動の時代を乗り越える人々にとって変わらぬ理想であり続けてきた――「泰然自若」は、そのことを教えてくれる言葉でもあるのです。


田中部長と「泰然自若」~営業部、パニックの中で動じない!?~

ある日、営業部に 「超重要なプレゼン直前のトラブル発生!!」 という危機が訪れる。しかし、田中部長は 「どんな状況でも泰然自若!!」 という信念を掲げ、営業部は “冷静になりすぎて逆におかしなことになる”という カオス状態 に突入する――!?


【登場人物】

  • 田中部長(50歳):何が起きても「動じないことが大事」と言い続けるリーダー。しかし、それが逆に状況を悪化させる。
  • 山本課長(40歳):冷静なツッコミ担当。部長の「泰然自若すぎる態度」に振り回される。
  • 佐藤さん(25歳):天然で無邪気。部長の教えを 変な方向に信じて、さらにカオスを生む

田中部長:「みんな!! これは “営業部最大の試練” だ!!」

佐藤さん:「ええっ!? また何か大変なことが起きたんですか!?」

山本課長:「いや、大抵こういうときは ロクなことがない んですよね…。」

田中部長:「なんと… プレゼン直前に、全てのデータが消えた!!

佐藤さん:「ええええええええええ!!??」

山本課長:「またですか!? 部長、バックアップは!?

田中部長:「取ってない!!!」

佐藤さん:「えええええええええ!!?? ど、どうするんですか!? もう プレゼンは1時間後 ですよ!!」

田中部長:「…落ち着け。こういう時こそ、 泰然自若 だ!!」

佐藤さん:「えっ!? 泰然自若って何ですか?」

山本課長:「“どんな状況でも落ち着いて動じないこと”って意味ですよ。」

田中部長:「その通り!! つまり、この危機に動じてはならない!! 俺たちは、ただ冷静であればいいのだ!!

佐藤さん:「なるほど!! じゃあ、私は何もしないでじっとしてます!!

山本課長(小声で):「いや、何かしろよ!!


【田中部長の「泰然自若」作戦】

【作戦①:「どんなピンチでも焦るな!」】

佐藤さん:「部長!! プレゼンのデータがないなら、もう 今すぐ作り直すしかない ですよ!!」

田中部長:「ダメだ!! 焦ったら負け だ!!」

山本課長:「いやいやいや!! そう言ってる間に 時間がどんどん減ってますけど!?

佐藤さん:「じゃあ、とりあえず スライドを1枚だけ作り直します!!

田中部長:「いや、それも不要!! 落ち着いていれば、勝手に解決する!!

山本課長(小声で):「いやいや、解決しないでしょ!? 何か行動しないと!!


【作戦②:「プレゼン中に“落ち着きをアピール”する!!」】

田中部長:「万が一、プレゼンが崩壊しても大丈夫!! “落ち着いている姿” を見せれば、クライアントは安心する!!」

佐藤さん:「えっ!? そんなので大丈夫なんですか?」

山本課長:「いやいや、普通にプレゼン内容を準備しましょうよ!!」

田中部長:「大丈夫!! 例えば、こうだ!!」

(プレゼン練習)

田中部長:「皆様、こんにちは。本日のプレゼンは…なんと、スライドがありません。

佐藤さん:「えええ!? そんなこと言っちゃっていいんですか!?」

田中部長:「しかし…皆様。本当に大事なのは、スライドでしょうか?

(静まり返る会議室のシミュレーション)

山本課長(小声で):「いやいや!! それで納得するクライアントはいませんよ!!」


【作戦③:「何が起きても“これは計画の一部”と言い張る!」】

佐藤さん:「部長!! もしクライアントが 「このプレゼン、スライドがないんですか?」 って聞いてきたらどうするんですか?」

田中部長:「その時は、こう言うんだ!!」

田中部長:「『はい、これは計画の一部です! 皆様の想像力を最大限に引き出すため、あえてスライドを使わない戦略を取りました!!』

佐藤さん:「おおお!! なんかそれっぽい!!」

山本課長(小声で):「いや、普通に “データが消えました” って言ったほうが良くない!??」


【商談当日:衝撃の結末】

(営業部、クライアントのオフィスへ)

クライアント:「本日はよろしくお願いします。」

田中部長:「よろしくお願いします!! さて、今日のプレゼンですが… スライドはありません!!

クライアント:「えっ!?」

(場が微妙な空気に)

田中部長:「しかし、これは計画の一部です!! 皆様の想像力を最大限に引き出すため、あえてこの形にしました!!

(クライアント、沈黙)

クライアント:「……なるほど、確かにそういうプレゼン手法もありますね。」

佐藤さん(小声で):「えっ!? 信じちゃった!?」

クライアント:「落ち着いて説明されると、意外と納得できますね。では、詳細をお聞かせください。」

田中部長:「見たか!! これが “泰然自若”営業 だ!!!」

山本課長(小声で):「いや、ただの 奇跡的なラッキー ですよね!?」


こうして営業部は、 「何が起きても動じない作戦」 で、まさかの契約チャンスをゲット。しかし、この方法が次回も通用するかは 完全に未知数 であった――。

プロフィール
編集者
Takeshi

医療専門紙の取材・編集職を15年以上の経験があり、担当編集としての書籍は、8冊(うち2冊は中国・台湾版)があります。

本サイトでは、日々の生活やビジネスで役立ち、古くから伝わる故事成語の深い意味や背景をわかりやすく解説し、皆さまの心に響くメッセージをお届けしたいと思っています。歴史や文学への情熱を持ちながら、長年のメディア経験を通じて得た視点を活かし、多くの方に「古き知恵の力」を実感していただけるようにしたいと思います。

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