耳を掩(おお)いて鐘を盗む/問題回避の落とし穴とビジネス戦略

教訓

出典:呂氏春秋

「耳を掩いて鐘を盗む」とは?

「耳を掩いて鐘を盗む(みみをおおいてかねをぬすむ)」とは、自分だけが気づかないふりをしても、他人には明らかであり、結局は欺くことができないという意味の故事成語です。

この言葉は、中国の古典『呂氏春秋(りょししゅんじゅう)』に記されており、自己欺瞞(じこぎまん)の愚かさや、問題を見て見ぬふりをすることの無意味さを教えています。

「掩耳盗鐘(えんじとうしょう)」(中国語:掩耳盗钟)
「耳を塞いで鐘を盗む」の意味。鐘を盗んでも、その音は他人に聞こえてしまうのに、自分だけが気づかないふりをするという愚かな行為を指す。

歴史的な背景

この故事は、戦国時代(紀元前5世紀~紀元前3世紀)に編纂された『呂氏春秋』に登場し、滑稽でありながら深い教訓を持つ寓話(ぐうわ)です。

ある男が、寺院にある大きな鐘を盗もうとしました。しかし、その鐘は金属製で、持ち運ぶには非常に重く、運ぶ途中で大きな音を立てることは避けられませんでした。

男は、鐘を叩けば音が鳴ることに気づき、他人に盗みがばれるのを恐れました。そして、音が聞こえないようにするために、自分の耳を塞ぎました。

しかし、当然ながら鐘の音は周囲に響き渡り、男はすぐに捕まってしまいました。

「耳を掩いて鐘を盗む」の教訓

この故事が伝える教訓は下記の通りです。

  1. 問題を無視しても、現実は変わらない
    • 自分が聞こえないからといって、他人も聞こえないわけではない。現実逃避しても問題は解決しない。
  2. 自己欺瞞(じこぎまん)の危険性
    • 自分の都合の良いように考えても、事実は変わらず、結果的に損をすることになる。
  3. 合理的な判断の重要性
    • 物事を客観的に捉え、適切な行動を取ることが大切。感情的な行動は時に大きな失敗を招く。

まとめ

「耳を掩いて鐘を盗む」は、問題を無視しても解決にはならず、むしろ状況を悪化させることを教える故事です。この教えは、ビジネスや組織運営においても適用可能であり、危機管理や誠実な対応の重要性を示しています。

  • 企業: 透明性を重視し、問題を隠さずに対処することが信用を守る。
  • 社会: 貧困や環境問題を見て見ぬふりをせず、積極的に解決策を模索する姿勢が重要。
  • 個人: 自分の課題やミスを直視し、改善に努めることで成長につながる。

この故事を教訓とし、問題に正面から向き合い、適切な行動を取ることが、成功への第一歩となるでしょう。


田中部長と「耳を掩いて鐘を盗む」~営業部、見て見ぬふりで大混乱!?~

ある日、営業部に 「ミスを絶対に許さない超厳格なクライアント」 との商談が決定。しかし、田中部長が 「バレなければ問題なし!」 という例によって謎の作戦を決行し、営業部は “見て見ぬふり”のカオス状態 へ突入することに。

【登場人物】

  • 田中部長(50歳):基本ポジティブだが、ミスを誤魔化すことに異常な才能を発揮するリーダー。
  • 山本課長(40歳):冷静なツッコミ担当。部長の「気づかなければセーフ」理論に呆れつつも巻き込まれる。
  • 佐藤さん(25歳):天然で無邪気。部長の方針を忠実に守りすぎて、さらに大惨事を生む。

【会話】

田中部長:「みんな、超重要クライアントの田村商事との商談が決まった!」

佐藤さん:「ええっ!?それって、すごく厳しい会社ですよね?」

山本課長:「確か、“ミスを絶対に許さない”で有名な会社ですよね?細かい部分までチェックされると聞きましたが…。」

田中部長:「だからこそ、“耳を掩いて鐘を盗む”作戦でいく!」

佐藤さん:「えっ?鐘を盗む?何ですかそれ?」

山本課長:「“自分さえ気づかなければ、問題は存在しない”っていう、 最もダメな思考パターン ですよ。」

田中部長:「その通り!つまり、“ミスが見つからなければ、それはミスではない!”」

山本課長:「いやいや、クライアントにバレたら即アウトでしょ!!」

佐藤さん:「でも、部長がそう言うなら、私も“見なかったこと”にします!」

山本課長:「佐藤さん、それが一番ヤバいんですって!!」


【田中部長の「耳を掩いて鐘を盗む」作戦】

【作戦①:「間違いに気づかなければ、それは存在しない!」】

田中部長:「まず、資料にミスがあっても、 “堂々とスルー” しろ!」

佐藤さん:「えっ!?本当にスルーしちゃっていいんですか?」

田中部長:「大丈夫だ!クライアントが指摘しない限り、それは “なかったこと” になる!」

山本課長:「いや、そんなことしたら 必ず指摘されます って!!」

(資料を確認すると…)

佐藤さん:「あっ!“契約期間3年”が“契約期間300年”になってます!」

山本課長:「ちょっ!?それは修正しましょうよ!!」

田中部長:「いや、大丈夫だ! クライアントが気づかない可能性に賭ける!

山本課長:「その賭け、絶対負けますよね!??」


【作戦②:「気まずい場面では、全員一斉に咳をする!」】

田中部長:「万が一、クライアントにミスを指摘されたら、 “全員で一斉に咳をしてごまかす”!」

佐藤さん:「えっ!?そんなので誤魔化せます?」

田中部長:「例えば、クライアントが 『この契約期間、300年になってますよ?』 って言った瞬間に… “ゴホゴホゴホ!!” だ!」

山本課長:「いや、むしろ 不審すぎる でしょ!!」

佐藤さん:「じゃあ、私、咳の練習しておきます!」

山本課長(小声で):「いや、そこ練習するポイントじゃない…。」


【作戦③:「最悪の場合、話を別の方向へすり替える!」】

田中部長:「万が一、ミスが完全にバレた場合は 話を別の方向へそらす !」

佐藤さん:「どうやってそらすんですか?」

田中部長:「クライアントが 『この契約、300年って間違いでは?』 って聞いてきたら、 『ところで、田村社長は猫派ですか?犬派ですか?』 と聞き返せ!」

山本課長:「いや、話が雑すぎる!!」

佐藤さん:「じゃあ、私は『最近、天気が変わりやすいですよね』って言います!」

山本課長:「いやいや、もうミスをごまかす気ゼロですよね!?」


【商談当日:まさかの大惨事】

(営業部、クライアントのオフィスへ)

クライアント:「本日はよろしくお願いします。」

田中部長:「こちらこそ、よろしくお願いします!」

(プレゼン開始。だが――)

クライアント:「ええと…契約期間が 300年 になってますが?」

(営業部、一斉に咳を始める)

「ゴホゴホゴホ!!!」

クライアント:「えっ…?」

山本課長(小声で):「あああ…絶対に怪しまれてる…!!」

クライアント:「いや、明らかにミスですよね?」

田中部長:「で、ですが… 田村社長は猫派ですか?犬派ですか?

クライアント:「は?」

山本課長(小声で):「終わった…。」


【まさかの逆転!?】

クライアント:「…まあ、細かいミスはともかく、貴社の対応は 斬新で面白い ですね。」

佐藤さん:「えっ!?本当ですか?」

クライアント:「いや、普通こんなミスしたら焦るものなのに、ここまで堂々と“見なかったこと”にされると、逆に感心しますよ。」

田中部長:「そ、そうでしょう!? これが“耳を掩いて鐘を盗む”営業だ!

クライアント:「では、今回の契約は前向きに検討させていただきます。」

山本課長(小声で):「奇跡が起きた…。」

こうして営業部は、 「見て見ぬふり作戦」 で、まさかの契約の可能性を手に入れた。しかし、この方法が次回も通用するかは 未知数 であり、新たな試練が待ち受けていた――。


プロフィール
編集者
Takeshi

医療専門紙の取材・編集職を15年以上の経験があり、担当編集としての書籍は、8冊(うち2冊は中国・台湾版)があります。

本サイトでは、日々の生活やビジネスで役立ち、古くから伝わる故事成語の深い意味や背景をわかりやすく解説し、皆さまの心に響くメッセージをお届けしたいと思っています。歴史や文学への情熱を持ちながら、長年のメディア経験を通じて得た視点を活かし、多くの方に「古き知恵の力」を実感していただけるようにしたいと思います。

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