「後漢書」巻36 列伝第26
五里霧中とは
五里霧中(ごりむちゅう)とは、5里に渡る深い霧のなかにいるようで、状況がわからないなかで手探りで状態。方針や方向性などがわからず困ること。
構文解析
- 五里(ごり):距離を表す単位で、ここでは長い距離の比喩として用いられています。
- 霧中(むちゅう):霧の中にいること。
全体として、「視界が遮られ、前後左右がわからない状態」を意味します。
五里霧中の歴史的背景
儒学者・張楷(ちょうかい)が、五里にわたる霧を発生させたという記述があります。張楷は道術を好み、神秘的な能力を持つ人物として知られていました。
ある日、張楷の道術が新たな事件を引き起こします。
桓帝の時代、裴優(裴优)という人物が宗教やカルトを利用して自らを皇帝と名乗りました。現政権に対抗した裴優は漢王朝に逮捕されて処刑されました。
その際、裴優は張楷から霧を作る道術を学んでいたと供述したため、張楷は捕らえられ取り調べを受け、罪に問われることになりました。数年後になって、無実が証明されて解放されました。
このように、張楷の道術はただの奇術ではなく、時代の中で重大な影響を与えた要素として認識されていました。これが、「五里霧中」の故事成語とされ、現代に伝わっています。

エピソード
後漢時代。張楷は敵軍の進軍を阻むために、自らの道術を使い五里にわたる濃い霧を作り出しました。敵軍は霧の中で方向を見失い、大混乱に陥りました。
張楷の兵:張楷様、この霧はまさに神業です! 敵は何も見えず、混乱しています。
張楷:これはただの道術だ。しかし、敵が混乱している間にこちらが冷静に動けば、勝機は我らにある。
一方、敵軍では混乱が続いていました。
敵軍の将軍:この霧のせいで部隊が分散してしまった!進むべき道がまったくわからない。
敵軍の副官:張楷の仕業に違いありません。進軍を中止し、再編成を待つべきです。
さらに、張楷の霧には単なる物理的な効果以上の影響がありました。その神秘的な能力は、兵士や民衆に心理的な影響を与え、張楷の名声を高める結果にもなりました。
張楷の兵:この霧は敵軍だけでなく、味方の士気も高めています!まさに奇跡の力です。
張楷:これは奇跡ではない。計略の一部にすぎぬ。重要なのは、この混沌を利用してどのように優位を築くかだ。
霧が晴れたとき、敵軍は疲弊し、張楷の軍は優位な布陣を整え、勝利を収めました。このエピソードは、物理的な霧だけでなく、戦略や状況の混迷を巧みに利用することの重要性を示しています。
現代ビジネスへの具体的な事例・応用例
- データ過多による意思決定の遅れ
- 事例:2010年代、ビッグデータの時代に突入した多くの企業が膨大な情報量に翻弄され、最適な意思決定ができない状況に陥りました。問題解決として、GoogleはAIを活用して重要なデータを絞り込み、効果的な意思決定を可能にしました。
- 教訓:情報の洪水に飲み込まれるのではなく、整理し、分析を行う仕組みを構築することが重要です。
- 市場変化の中での戦略構築
- 事例:2020年、新型コロナウイルスの流行により、旅行業界は一時的に混乱しました。Airbnbはこの混乱の中、長期滞在需要やリモートワーク需要に対応した新しいサービスを打ち出し、業績を回復させました。
- 教訓:不透明な状況では、新たな需要を見つけて柔軟に対応する能力が鍵となります。
- プロジェクトの行き詰まり
- 事例:某IT企業の開発チームが、新しいアプリケーションの設計で仕様変更が重なり、混乱が生じました。しかし、アジャイル開発手法を採用し、段階的に進捗を確認することでプロジェクトを再構築しました。
- 教訓:混沌とした状況でも、小さな目標を設定して進むことで解決策が見えてきます。
まとめ
「五里霧中」は、混乱した状況で方向を見失うことを表します。しかし、冷静さと知恵をもって分析し、道筋を立てることで困難を乗り越えることができます。この普遍的な教えを、現代のビジネスや日常生活に活かしましょう。