燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや(えんじゃくいづくんぞ こうこくのこころざしをしらんや)
「燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや」は、中国の歴史書『史記』に記された故事で、司馬遷が記した陳勝(陳渉)の逸話に由来します。この言葉は、大志を抱く者が、目先の小さな利益や日常の安穏を求める者とは志が違うことを示しています。
陳勝は秦王朝末期の人物であり、農民出身ながらも最初の農民反乱を起こした指導者の一人です(陳勝・呉広の乱)。彼は仲間たちに、自分たちが秦(始皇帝没後)の支配から解放されるために立ち上がる必要性を説きました。
そのなかで、「燕雀(スズメのような小鳥)には、鴻鵠(大きな白鳥)の志を理解することはできない」と述べ、大きな目標を持つ者が小さな考えの人々に理解されないことを示しました。
故事が生まれた逸話
陳勝は、秦の苛酷な支配(厳しい罰則、納税など)のもとで小作人として働いていました。ある日、徴用されて兵役に向かう途中、彼と仲間たちは厳しい労働に耐えられず反乱を計画します。なぜなら、仕事の納期に間に合わず、秦の法令ではいかなる理由でも期日までに到着しなければ斬首である。とうてい期日に到着できない。そう判断した陳勝と呉広は反乱を決意し、秦の将尉たちを殺そうと算段しました。
陳勝は「死を待つならば、むしろ大志を抱いて戦おう」と訴えました。
この時の言葉が「燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや」であり、反乱の合言葉ともなりました。
「燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや」は、大志を持つ者とそうでない者の視点の違いを強調しています。小さな視野に囚われた者が、大きな目標を持つ人々を理解できないことを表し、大胆な挑戦や革新をする上での覚悟を示唆しています。
現代ビジネスへの応用
現代のビジネスにおいても、この故事は重要な示唆を与えます。
イノベーションの推進
破壊的イノベーションを追求するリーダーは、往々にして従来の枠組みに囚われた人々から批判されます。このような状況でも信念を貫くことが重要です。
大きな目標の設定
チームや組織のリーダーとして、大胆な目標を掲げ、それに向かうための行動を促す際に、この故事の精神が役立ちます。
ビジネス用例
- 用例1: 起業家が挑戦的なビジネスプランを発表した際、「燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや」の精神で突き進むべきだと述べた。
- 用例2: 新規事業への挑戦を阻む社内の保守的な意見に対し「燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや」を引用して反論した。

類義語
大器晩成:大きな器量を持つ者は成長に時間がかかるが、いずれ大成する。
志は高ければ高いほど良し:目標や志は高く持つべきである。